食べ物の好き嫌いと性的嗜好

私はあまり食べ物の好き嫌いはありません。なので、好き嫌いの激しい人と食事に行くと、正直メンドクサイなあと思います。

 

以前、何人かで日本海側へツーリング行きました。新鮮な魚がとれる場所なので、現地で海鮮丼でも食べようと楽しみに走っていました。ところが昼食を何にするか相談していたところ、「オレ魚ダメ。食べれないんだ」と言い出した人がいました。「気にせず好きなもの食べてください」と言われましたが、魚専門の店に魚以外のメニューがあるとは思えません。その人のために、中華料理のチェーン店でお昼を食べることになりました。せっかく楽しみにしてたのに!遠くまできたのに!

 

魚好きの人にとって魚嫌いの人はめんどくさい存在です。ちょこちょこいらっしゃいます。そんな人に「なんで魚嫌いなの?」と聞くと、臭いが嫌だとか、小骨が嫌だとか、子供の頃に嫌な思いをしたとか。

 

そういう食べ物の好き嫌いは、人間の脳の仕組みからきていて、性的嗜好やら好み全般に共通点があると思います。

 

ちょっと長くなりますが、それについて書いてみます。なぜ好き嫌いというものが生まれてしまうかについて考えてみましょう。

 

食べ物の好き嫌いには、人間の脳の仕組みが関係しています。動物の脳には、視覚や触覚、嗅覚などの感覚器官を通じて、さまざまな情報がインプットされます。その情報から自分にとって有益なもの、害のあるものを判断して、自分の生命を維持するようになっています。自分にとって有益なものは、心地よさを感じて、再び得ようとするし、害のあるものは不快さを感じて避けるようになっています。


その感覚の判断基準は、生まれながらに持っているものもあれば、後天的に学習するものもあります。食べ物でいえば、苦い味のものを食べないというのは、生まれながらに持っているもので、何度か食べているうちに好きになっていくものが後天的な学習です。

 

この感覚は、子供の頃から大人になっていく過程の中で、脳の中の回路として定着していき、成長すれば、変わりにくいものになっていきます。したがって大人になってから好き嫌いを矯正するのは、非常に困難です。美味しくないと本人が感じるものを無理やり食べさせても、美味しいと思えるようにならないのは、脳の回路がそのようになっていないからです。時間をかけてつくられた脳の回路を突然変更することはできないということでしょう。


さて、ここから性的な嗜好の話になります。性的な嗜好も、人によって様々です。ある人は、グラマラス=肉感的な異性の体を見るのが好きであったり、ある人は痩せたスレンダーなスタイルが好きだったり、ある人は視覚よりも異性の匂いで興奮したり、ある人は衣服で興奮したり、人によって性的に興奮するものは、いろいろ異なっています。

 

これは食べ物の好みとよく似ていると思うのです。食べ物の場合は視覚と味になりますが、つまりはどんな情報を脳が受けとれば、それが脳内の快楽につながるか、ということを学習し、それが脳の回路になっているということです。

 

性的な嗜好も食事の好みと同じように、受ける情報と快楽が、脳の回路としてつくられたものだと思います。受ける子供から大人に成長していく過程で形づくられるものです。先天的なものをベースに後天的な学習との組み合わせでつくられるのも、食べ物の嗜好と同じでしょう。顔の好き嫌いもそういう風につくられるのでしょう。

 

したがって、この性的快楽の回路は、食べ物の好き嫌いと同じく、大人になってから矯正することは難しいものになります。例えば同姓愛者を無理やり異性愛に変えようとしたり、痩せている異性が好きな人をデブ好きに変えるのが難しいのです。脳内にできた回路は、簡単には変更できません。


じゃあ、この仕組みを前提に、どう行動すればよいか、ということについて建設的に考えてみました。

 

例えば、覗きが好きな人が、覗きができないので、代わりに覗きのビデオや写真を見て、快楽を得てる人がいたとします。覗きは犯罪ですから、代わりに他人がつくったコンテンツを利用するのですね。しかしこれは危険な行為です。これは覗きをすれば快楽を得られる、という頭の中の回路を強化しているので、覗きの性的嗜好がなくならないばかりか、ひどくなってしまいます。人がつくったものに満足できず、いずれは犯罪を犯してしまいかねません。自分の性的な嗜好が、反社会的なものであった場合、その嗜好は矯正しないといけません。

 

また女性が若いアイドルのビデオや写真を集めて、コンサートに出かけ、追っかけをするのも、反社会的ではありませんが、社会への不適合を招く危うさを感じます。美形の男性はつくられた偶像で、現実にはほとんどいませんから、自分の嗜好をその方面で強化すると、現実の世界でパートナーが得られない、ということになりかねません。

 

その嗜好によって、日常生活で支障がでたり、将来不利益になったり、他人に迷惑をかけたりする可能性があれば、その脳の回路は強化するのではなく、解いたほうがよいです。

 

そしてこの回路を解くには、その強化につながる情報をシャットダウンして、別の快楽を与えるのがよいと思います。そこで問題となるのは、その別の快楽が得られないとき。これはなかなか難しい話です。

 

例えば身体的な発育が何かの原因によりとまっている場合は、ホルモンなどの注射が必要になると思いますし、精神的なものの場合は、分析して時間をかけて脳内の回路を結びなおさないといけません。人によって、その原因や成り立ちが違うので、こうすればよい、という一律的な解決方法はありません。


食べ物の話に戻ると、どうしようもないと諦めて、嫌いなものを一生食べないようにするか、時間をかけて食べられるようにするか、そのどちらかになるのでしょうけど、嫌いなものを食べ続けても、好きになるってないですから、なかなか難しいです。

 

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