エロティシズムの不思議さ

私は身長が高いので、混雑した電車に乗っていると、人が見ているスマホの内容が頭越し見えたりします。誤解があると困りますが、別に覗き見の悪癖があるわけではありません。背が高いので、なんとなくぼんやりしていたら、他人のスマホの画面が目に入ったりするだけです。

 

ゲームしている人や、ニュースを見ている人、皆さん、暇つぶしにいろんなコンテンツを見ているようですが、朝から色恋沙汰の人も少なくありません。

 

中年男性が、浮気相手へ言い訳メールを送ったり、若い女性が好きな男性にラインの文章を何度も書き直していたりと、恋愛進行形の人は、朝の通勤時間を相手へのメッセージに費やしているのです。そういう人の一生懸命なところを見ると、思いを込めて和歌を詠んだ平安時代とやっていることは変わっていないかもしれんなあ、などと微笑ましく思ったりします。

 

しかし、この恋愛というか、性欲というものはメンドクサイ本能だと思いませんか?

 

私も男ですから、綺麗な女性がいれば、つい見てします。男だけでなく、女性もイケメン好きですよね。美しい容姿を持つ人は、異性を引き付けます。

 

我々の性欲は、食事や休息と同じく、心地よさや快楽がともないます。その心地よさを分解すると、生殖本能と関わる人間の自然な脳内の働き、つまり脳内の快楽物質です。しかしその快楽物質を出す仕組みというのは、単純なものではないような気がします。

 

例えば、好ましい異性のイメージを見ると、我々は心地よさを感じます。だから誰でも、ネット上で自分の好みの容姿の異性の画像を探したり、見たりするのです。

 

私は写真を撮るのが趣味で、綺麗なモデルさんのポートレートを撮影するときがあります。相手が女性だと、撮りながらドキっとすることも少なくありません。そして撮った写真を編集して画像補正する際に、よい写真と悪い写真を振り分けます。例えばシャッターチャンスが悪くて、薄目になっているような写真は廃棄します。

 

そういう作業をしていると、どんな美人でも、変な顔をしていると魅力がなくなることがよくわかります。また、拡大して顔の肌を修整していると、ニキビや傷などがたくさんあって、性的な魅力などを感じることはありません。パソコンで補正を掛けたり、作業を続けているときは、エッチな気持ちなんて起こりません。

 

そういうことから、性的な魅力というものは、頭の中でつくられたイメージであって、たくさんある情報から、不要な情報を省いたエッセンスのようなものだと思うのです。例えが少し違うかもいますが、漫画の絵のようなものかもしれません。顔の形、体型、それぞれのパーツはわかるのですが、細部の情報がない漫画絵のようなものです。

 

その都合のいい部分のみを集めた情報が、我々の性的な本能を刺激するのです。ですから、情報が記号化されているアイドルやタレントなどに人々は夢中になるのです。実際どんな綺麗なアイドルでも、一緒に暮らしたら、人間らしい生々しい部分が目に入り、フアンも醒めるのです。

 

また、同じ刺激を繰り返すとだんだん飽きてくるという脳の仕組みも無視できません。初めて見て、いいなあ綺麗だな、と思うときは、脳内に快楽物質がドバドバ出ているわけですね。快楽物質がでているので見て心地よいわけです。ところが、同じ人の画像を何度も眺めていると、視覚的な刺激に慣れてきて、最初と同じような量の快楽物質が出なくなってくるのです。

 

刺激に慣れて飽きてくるのでしょう。だからAVなどの性的なコンテンツは、消費物なので、どんどん新しい需要が生まれるということなのでしょう。

 

エロティシズムを求めるのは本能であり、肉体的なものではあるけれども、情報を記号化して処理する、脳の働きと密接にかかわっていると思います。

 

なんかオチのない、とりとめのない話になりました。性的な思考を生み出す本能は、仕事や勉強の効率を下げるので、メンドクサイなあ、と思いつつ、もしこれが無くなってしまったら、人生が味気なくなってしまうなあ、とも考えるのでした。

 

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