マインドコントロールと自動思考

ある団体や誰かに洗脳されている人について、なぜ信じてしまうのだろうか、と不思議に思ったことはありませんか?

 

最近では某宗教団体への寄付などが新しい話題です。びっくりするような金額の寄付。もともとは自分や家族の幸せのためにその宗教を信じ始めたのに、信仰のせいで家族を不幸しています。

 

芸能ニュースでは、占い師や整体師に洗脳されているとか、たまに聞きますし、国際ニュースでも、カルト武装集団は洗脳されているといわれています。DV男と別れられない女性も、洗脳されているといえるかもしれません。

 

たいていの人は、こうした話を聞くと、洗脳される人は性格が素直なのか、馬鹿なのだろう、自分はしっかりしているので信じない、騙されないと考えます。洗脳は、理屈や妙な考えを人にしつこく巧妙にふきこんで、信じさせたり勘違いさせるように思われているからです。そんなおかしな理屈には騙されないぞ、と思うのです。

 

でも洗脳の仕組みは、考えを理屈でふきこむのではなく、人間がもっている脳の仕組みを利用するものなのです。洗脳される可能性は、一部の人だけに起こりうることではなく、誰にでもありえるといえるでしょう。カルト教団に高学歴の人が洗脳されることがありましたよね。頭の良さや知識の量なんて関係ありません。本記事ではそのことについて述べたいと思います。

 

まず、自分の思考は自分自身でコントロールできない、ということを思い出してください。

 

例えば、通りすがりの見知らぬ誰かと口論になったとしましょう。肩がぶつかったとか、足を踏んだとか、肘があたったとか、そんな些細なことが原因です。たまたまお互いの虫の居所が悪くて、注意した人と注意された人が、感情的になってしばらく文句の言い合いになってしまった。

 

第三者が割り込んで、なんとかその場はおさまりました。でも頭の中は怒りでいっぱいで、興奮もしています。時間がたって、やがて多少冷静にはなりましたが、なんだかイライラ、モヤモヤがおさまりません。次の日になっても、昨日のことを思い出しては腹が立ってくる。数日後も、楽しいことをしている時間なのに、ふと思い出したりして、嫌な気分で頭の中で満たされてしまったり。

 

考えても仕方がないということは自分でもわかっているし、思い出したくもないし、他に考えるべきことがあるのに、思い出してはいろいろと考えてしまう。こうした頭の動きを自動思考というそうです。

 

ストレスや不快さが大きければ大きいほど、この自動思考は強く長く持続します。恋人や家族との別れなど、精神的なダメージが大きい場合は、何年もあとを引いたりします。後悔があれば、あの時こうすればよかった、など同じ思考が頭の中で何回も繰り返されてしまいます。こうした経験は、多かれ少なかれ誰にでもあるのではないでしょうか。

 

我々は、自分の頭の中をコントロールしていると思っていますが、実は自分でどうにもならないことがあります。そもそも脳の活動は、ほとんど自動で動いています。内臓やら体全体の機能をコントロールしているのは脳です。それらは意識しなくても自動運転してくれています。心臓を止めようと思っても、意思で止められません。脳の自動運転は手動に切り替えられないということです。

 

思考や感情という部分においても、それらと同じように自分でコントロールできない部分があると理解すれば、なるほどと納得できるのではないでしょうか。特に外部から与えられたストレスに起因する思考や感情は、自動運転の領域に近いのでしょうね。

 

さて、ぶつかった人の話に戻ります。実はそれが他人が故意にやったことでしたらどういう意味になりますか。ぶつかってきたのも因縁をつけてきたのも、初めから計画的だったとしたら。

 

その出来事によって、頭の中にあふれた怒りや悔しさ、こうすればよかった、とか生まれた思考や感情は、相手によって意図的につくられた状態ということになりませんか。つまり自分の頭がハッキングされているといえませんか。

 

人が人に対して、頭の中に本人が制御できない思考や感情を生み出させることは、とても簡単なことなのです。本人がストレスを感じる刺激を与えればいいだけですから。ストレスを感じると、頭の中で自動思考が動き出し、相手はその考えで満たされていき、自分ではどうしようもありません。

 

そうした状態にしてから、優しくしたり、いい解決案を教えたり、ストレスを軽減させる望みや可能性をみせてあげると、本人の考えをある方向に導くことができます。自身が制御できないところで、自動思考が動きはじめると、自分では止まらなくなりますので、いつしか、自動思考の考えている部分を自分の意思だと思い込み、それに影響を受けて判断や行動をしてしまうようになるのです。

 

これが洗脳のプロセスです。

 

意思の強い人、精神的にタフな人であっても、ストレスを全く感じないことはありません。どれだけ精神的に強い人でも、肉体的な拷問には耐えられません。ストレスを感じる仕組みがある以上、他人が自分の中に自動思考を生み出すことを防ぐことは出来ません。つまり自分だけは大丈夫ということはないのです。

 

人や組織から洗脳されないためには、ストレスを与えてくる状態からさっさと逃げること。これしかありません。

 

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