心とつながる皮膚

人の最大の臓器は皮膚だそうです。最近読んだ本に書いてありました。

 

そういわれると、少々違和感がありました。だって体の中に入っているから、臓器っていうんじゃないの?皮膚は露出しているし、臓器というと、肺や心臓、胃や肝臓などの内臓のことじゃないの?と思いました。

 

これは日本語と英語の関係から生まれた違和感のようです。臓器は英語ではOrganで、内臓のことをInternal Organといいます。Organを最初に和訳するときに臓器という言葉をあてたのです。(オランダ語のOrgaanから訳したと思います。)中国医学には昔から五臓六腑という言葉があって、その中に皮膚は含まれていませんが、西洋医学のOrganの中には皮膚が含まれているといったほうがわかりやすいかもしれません。

 

説明がちょっと回りくどくなりましたが、言いたかったのは、皮膚というものは人間にとって大事な身体器官であるということです。機能はもちろん体温を維持し内臓を守ること。そして有害な物質や病原体から体を守ることです。

 

また、皮膚は第二の脳ともいわれています。人間が細胞分裂で成長する最初の頃、受精卵の一番外側にある外肺葉から脳も皮膚も派生するそうです。皮膚は「薄い脳」「脳の変形」「体を覆う脳」とも呼ばれています。そういえば皮膚には触覚、痛覚や温かさ冷たさを感じる機能があって、脳と直結していますね。

 

脳と直結していることにより、皮膚で得られる感覚は、人間の意識に強く影響するようです。

 

例えば、次のような実験が行われました。冷たいコップを持たせた被験者のグループと、暖かいコップを持たせたグループに、それぞれ初対面の人とあわせて相手の印象を述べさせるという実験です。暖かい飲み物を持たせたグループは、初対面の相手に暖かい人だ、という印象を持つそうな。

 

そんな単純なことあるの?と思いますが、確かなデータが得られました。ということは、握手のときは手の体温が高いほうが信頼感を得やすく、冷たいドリンクよりも温かいもののほうが接客にはよいみたいです。初デートでは相手に温かい飲み物を飲ませたほうがよいのかも。

 

そして、皮膚への刺激により、快楽物質のドーパミンを出すことも可能なんだそうです。これは痛覚を使います。ドーパミンはやる気や興奮などを生み出す神経物質で、脳幹にある快楽中枢で発生します。ドーパミンが出ると、性欲、食欲、学習意欲、仕事意欲などのさまざまな欲求や意欲がでてきます。

 

例えばSMプレイによる痛み。なぜ痛いのに快楽に感じるのか、それは皮膚の痛覚を刺激することにより、ドーパミンが出ているからです。またリスカなどの自傷行為がやめられないのも、ドーパミンが出ているからだといわれています。

 

修験道の滝にうたれる修行も、痛覚と冷覚によって、脳が刺激され、ドーパミンを出させている修行であると思います。

 

セックスの際も皮膚感覚の役割は大きいですよね。性的興奮と安心感に皮膚感覚は大きな影響を与えています。

 

自分が考えている以上に皮膚というものは心に影響を与えているということを覚えておいていたほうがよさそうです。

 

それと断酒をしたら、皮膚の傷の治るスピードが速くてびっくりしました。皮膚が第二の脳であるなら、断酒は第一の脳にもいい影響を与えていると思います。

 

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