外見の若さの価値

加齢というものは、ゆっくりと進むので、普段は忘れているのですが、若い頃の自分の写真を久しぶりに見たりすると、やっぱり自分は年をとったのだと、あらためて思う時があります。

 

自分の若い頃の写真は、毎日見ている鏡に映った顔と違って、肌もツヤツヤして血色がよく、ほうれい線もありません。あらためて自分の顔をよく観察すると、細かい皺やたるみ、シミなどがあり、年齢相応の顔になっています。

 

そうした加齢による顔面の変化は、お金を使ってメンテナンスをすれば、その速度を多少遅くすることもできますが、止めることはできません。そして生きていれば誰もが経験することです。

 

今の時代は、とにかく若々しくてつるっとした顔が良いといわれ、老けた顔が嫌がられる時代になっているので、顔面の老化は誰しも気にします。昔は、年齢を重ねて苦労や努力が刻まれた顔を、いい顔だといってた時代もあったんですがねえ。

 

日本人は特に、世界中でも外見の若さを重視する傾向が強いのではないでしょうか。洋画では中高年の俳優がいつまでも主役をやっていますが、邦画は演技の下手な若い役者が主役の映画がとても多く、商売になっています。若くて可愛ければ、かっこよければ芸がなくても商品価値があるようです。

 

なぜ日本人はそこまで若さへの信仰が強いのか。私は、その原因が二つあると考えています。

 

ひとつは日本人の清潔好きが原因です。こんなに掃除やお風呂が好きな国民は、世界中で他にいないでしょう。高温多湿という気候と、豊富な水資源が、日本人を清潔好きにさせました。

 

そして日本人の宗教や道徳にも、その影響が強くあらわれています。宗教では、ケガレとキヨメというのがあり、神様の来るところは綺麗にしないといけない。ケガレは不浄なものとして考える。綺麗にすることが運気や幸運を呼ぶ。掃除をすれば心も綺麗になる、という考えを持っている人が多いです。

 

この清潔至上の価値観が、綺麗な肌の価値につながり、それが若さ信仰へと繋がっているように感じます。若い肌のほうが清潔感があり、年寄りはなんだか汚れた感じがしますからね。

 

もうひとつは、日本における恋愛文化が、未成熟なところから来ているのだと思います。若い時に健全な恋愛ができる人は少数派で、多くの人は、成人後に恋愛をはじめます。恋愛においては人間性よりも外見を重視するのは多少は仕方がないとはいえ、若い頃に恋愛していない人は、若さ好きとなる傾向が強くなると思います。若い時に恋愛をしていた人は、若さに幻想を持たずに大人になり、外見よりも内面を見るようになると思います。

 

例が悪いかもですが、男のロリコンや女のアイドル好きは、恋愛経験がない人が多いと思うのです。若い時の異性に対する憧憬が、年をとってからの異性の好みにずっと影響していると思います。

 

欧米人は、若い時もそれほど肌が綺麗ではなく、日本人のような肌信仰もそれほどなく、若いうちに恋愛経験がある人の割合も多いので、若い子がとにかくいい、みたいなのはに日本に比べて少ないのではないでしょうか。

 

私は以上の二つを、日本人の若さ重視の要因だと考えます。ちょっと強引ですかね。

 

でも私はそれがダメだ!というつもりはありませんよ。それが日本人の特性であり、文化なのですから。欧米と違っていてもいいんじゃないでしょうか。

 

ただ、自分が年齢を重ねるにしたがって、価値が低下していく、と考えるのはよくないですね。齢をとるということは、知識や経験が増え、人として成熟したことです。外見の衰えを見て、昔よりも劣化した、なんて言うのは失礼な話であり、生命に対する冒とくです。

 

猫や犬のように顔が毛で覆われていたら、よかったんですけど、人間の場合は、顔が年齢を表すので、人はお互いの顔を見ながら、年齢や健康状態がわかるようになっているところが難儀ですね。

 

しかし、外見に若さがなくても、内面に年齢を重ねて得たものがあれば、それはよい味で外見にあらわれるというのは確かにあります。若作りも結構ですが、年齢相応の演出を考えてみてもよいのではないでしょうか。また若い人も自分の若さに胡坐をかいていると、薄っぺらい大人になっちゃうので注意しましょう。

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