コロナ禍で在宅勤務が長いため、休みの日に開放的な場所に出かけたくなります。私はバイクを持っていますので、人気のいない山や峠によく登っています。高い場所に登って、見晴らしのいい場所で、景色を見るととても気分が晴れるのです。
広い場所で開放感を感じて、気分がよくなるのは私だけでなく、誰でもそうだと思います。公園や広場に出かけたくなる人は多いです。
では、なぜ人は広い場所に行くと、安心してしまうのでしょうか。それは、人間が長い間、獣に襲われる被捕食者であったからだという説があります。
私たちが原始時代の人間や類人猿を思い浮かべる時、こん棒や尖った石器を取り付けた槍のようなもので、獲物を集団で襲っている強い存在のイメージがあります。でもそれは誤りで、他のどんな動物も殺すことができる、現代人の強さからくる誤ったイメージです。
類人猿から文明を持つ人間に変わっていくまでの何万年もの間、人間は他の強い動物に襲われて食べられる弱い存在でしかありませんでした。
弱いため、集団で暮らし、見えない場所、暗いところから襲ってくるかもしれない獣に怯え、敵がいない見晴らしのいい場所に行くと、すごく安心するというような暮らしが何万年も続いたので、すっかり人類は広い場所で安心するという心理が遺伝子に組み込まれてしまったということです。
その心理が、我々が広い場所に行きたくなる根源であるという説でした。まあ、もっともらしい説なので、なるほどと思いました。
この心理を応用しているのが、建築の空間設計です。普段狭い家に暮らしている人が、天井の高い空間、教会のようなスペースに行くと、不安というマイナス心理よりも、安心というプラス心理が働くのです。
その心理を使って宗教的に結びつける心理操作をしている、とまでいうと大袈裟かもしれませんが、建築における天井高さや空間の広さは、人間の心理に大きな影響があるのは間違いありません。
しかし動物によっては、広い場所がストレスになる生き物もいます。空から鳥によって攻撃される恐怖を感じる生き物、例えばネズミや爬虫類などです。彼らにとって背中を空に無防備にさらすというのは、とても緊張をする状態です。
人間は空から捕食者が襲ってくることはないので、空に対して悪いイメージを持つことはありません。もし原始時代に、プテラノドンのような翼竜が、人間を捕食するような時代が何万年もあったとしたら、空に憧れるような歌も存在しなかったかもしれません。