ドッペルゲンガーとデジャヴ

昨年度の年末から、あるマッサージ店に通うようになりました。施術が上手で値段もリーズナブルなので、月に二度ほど利用するようになったのです。

 

何度も通うので、次第に受付の女性と顔なじみになり、天気の話なども交わすようになった頃、その女性から「よくお話しされる方だったんですね。去年の夏ごろよく来られていたときから印象変わりました。しばらく来られていなかったので、どうされたのかなあ、って思っていたんです。」とニコニコしながら言われました。

 

「いや、私が利用させてもらうようになったのは、年末からですので夏頃は来てませんよ。別の方と混同されていますよ。」というと、「え、そうですか。おかしいですね。何度も来られてましたよ。」と断言されました。私がその店に行き始めたのは、確かに年末からであり、そういった事実はありません。

 

あまりにも自信たっぷりに言うので、よくよく話を聞いてみると、私と同じ背格好で、顔の似ている人が、その店を頻繁に半年ほど利用していたみたいです。人は意外と全体の印象で人を認識しているので、容姿の雰囲気が似ている人物を同一人物と誤解することがあります。

 

そのときに頭に浮かんだのは二歳違いの兄のこと。私は身長が高く、顔立ちも遠目でわかりやすい男っぽい骨格で、兄も同じような容姿をしています。昔は街を歩いていて間違われたことが何度かありました。今はお互い遠く離れた場所に住んでいるので、間違えられたのは兄でないことはわかっています。

 

たぶん身長が高く私と雰囲気が似ている人なのだろうと想像しました。しかしあまりにも店員さんが「同一人物にしか見えないです。」などと、確信をもって言うので、彼女の記憶がおかしいのか、あるいはもしかして私が忘れているだけなのか、と少しうすら寒いものを感じました。

 

こういう話がドッペルゲンガー伝説になっていったのでしょうね。その後、私のドッペルゲンガー氏とは、マッサージ店でニアミスをし、店の店員も同一人物ではなかったことを認識して、一件落着したのです。

 

話はかわり、ある日会社帰りに、家の近所の本屋に寄って歴史小説を買った話。

 

大河ドラマでやっている明智光秀が主人公の小説を購入しました。読んでいると、どこかで読んだような話だな、と思いました。数年前に明智光秀の子孫が書いたという本を読んでから、光秀にはまり何冊も読んでいて、また歴史小説だから話の筋に覚えがあっても仕方がない、と思って気にせずに読み進めていました。

 

しかし後半になって、作者が創作したオリジナルのエピソードがでてきて、その結末が予想通りだったので、やはり以前読んだ本であると確信しました。本棚にあるか探しましたが、しばらく前に処分した本の中に含まれていたらしく残ってませんでした。


同じ本を買ってしまった失敗は、初めてではなく5回目くらいです。読書好きでは「あるある」の失敗です。私はそのほかに持っているCDを買ってしまったこともあるし、映画を観ていて、最後に以前観た映画だと気がついたこともありました。

 

こういうことがあると、これは本当に購入したものか、あるいはデジャヴ(既視感)なのか、最初はわかりません。しかし読んだことがあるならば、意外とその前後の記憶が残っているものです。デジャヴであれば、ディテールがわからないので、それもなんとなくわかります。

 

ただ、初めて上映された映画を観てデジャヴを感じることもあるので、どういう仕組みでデジャヴという錯覚がおこるのか、何か説明できることはないかネットで調べていると、次の記述を見つけました。

 

「人間の感覚から神経を通ってきた信号が、脳内で認識し記憶される段階で、脳内で認識される作業以前に、別ルートを通り記憶として直接脳内に記憶として蓄えられ、脳が認識をした段階で、既に記憶として存在するという事実を再認識することによりおこる現象ではないか」とのこと。

 

簡単にいうと、何かを見てそれについて考えているときには、すでに別ルートで記憶化され、また過去の実際にあった記憶と混同されているので、前に見たことがあると、既視感を感じるということのようです。なるほど、それは納得です。

 

他に記憶の失敗に関することで以下のようなことがあります。

 

1.会社で何度か話をしたことがある他部署の人の名前が思い出せない。

2.サイトのパスワードが何だったか忘れてしまう。

3.映画やドラマのお気に入りの役者や監督の名前がでてこない。

4.  英文を入力していて簡単な単語のスペルが思い出せない。

5.漢字が思い出せずかけない。

6.昨日食べた夕食がなんだったか思い出せない。

7.先週の週末に何をしたか思い出せない。

 

俺の頭は退化してるのか・・・と悲しくなってしまいます。でもよく考えてみれば「若い時より記憶力なくなった」っていうのは、当たり前の話だと思うのです。

 

何故かというと、例えば10歳くらいから記憶が残っているとしたら、20歳で覚えているのは10年間くらいのこと。そして40歳では30年間分です。40歳では20歳と比べて、20年間も読んだ本、出合った人、経験したことが増え続けているのですから、それをすべて覚えておくのは無理だし、覚えている量が異なるのは当たり前です。

 

そして年をとればとるほど、思い出せないなあと思うことが増え続けるので、自分は忘れっぽくなったとか、記憶力がなくなったと感じるようになるのです。

 

年をとっても、それほど記憶力というのは実は衰えていません。1年ほど前に英単語の語彙を増強しようと頑張ったときがありました。若い時よりも記憶力が衰えていると思っていたので、記憶の仕組みと、効率の良い暗記について調べ、その通りにやってみました。


暗記のテクニックは、脳には一時記憶と長期記憶があり、忘却曲線というものがあります。物事は必ず忘れるものですが、忘却曲線のあるポイントで復習することで、長期記憶に変えることが出来るのです。


目標を1000個くらいの英単語にして、一日100個英単語を覚えるというノルマを続けました。コツは忘れても落ち込まないこと。朝に通勤電車の中で100個覚えます。昼に確認すると覚えているのは100個中30個くらい。夜にも復習します。
次の日に復習すると50個くらい残っています。これを毎日やるというのを1ケ月くらいやってみると、1000語の単語を覚えられました。やればできるものです。年をとったから学習能力が低下するというのは、勉強しない言い訳で、頭はそんなに悪くなってません。お酒のほうが加齢よりも悪影響です。

 

とまあ記憶に関していろいろ書いてみました。

 

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