誤った自己承認欲求の満たし方

私が社会人になりたての頃、新入社員同士で親しくなった同僚が、やたら自慢話をする人でした。自分の家は金持ちでとか、血筋がいいとか、有名な人が知りあいだとか、自分の趣味がいかに素晴らしいかとか、悪い人ではなかったのですが、いつも自慢話をするのが鬱陶しくて、距離を置くようになりました。

 

他人から認めてもらうため、話を盛る人は少なからずいます。釣った魚のことを大きく表現したり、ゴルフのスコアを水増ししたり、株で儲けた金額を一桁増やしたり。私はそういうことをしないので、何故そういうことを言うのか不思議です。人から感心してもらうことが嬉しいからなんでしょうね。

 

他者から認めてもらいたい。すごいと尊敬してもらいたい。褒めてもらいたい。とそんな気持ちが強い人たちなのでしょう。

 

これは自己承認欲求です。他者から認めてもらって自分を肯定したい、という欲求は、多かれ少なかれ全ての人にあります。

 

その欲求が正しく運用されると、努力して人から賞賛される結果を生み出す人になります。巨大な企業を一代で築いた実業家、素晴らしい作品を生み出したアーティスト、新たな発見をした科学者など、他人から社会から自分を認めてもらいたい、認めさせてやる、という強い欲求が、行動の原動力になっているわけです。

 

しかし多くの人は平凡な家に生まれて、凡庸で才能もなく、おまけに努力もしたくない怠け者です。その結果、平凡な人生を歩み、他人から尊敬され賞賛されるものなんて何もない。

 

でも欲求だけが強くある。

 

そこで、自分のやったことを大げさに言ったり、ひどいときはありもしない嘘を言ったりするのです。嘘なんか言ったって、ばれたり見透かされたりして、結果的に自分の信用がなくなるリスクはあるのに、目の前にある自己承認欲求を満たすために、しょうもないことを言ったりするのですね。

 

しかしほとんど人は、これくらいならばれても笑い話になるよね、というラインを守ってます。自分を客観視できる人であれば、嘘を言うのは恥ずかしいと思う気持ちがあるので、まるっきりの嘘を言わないのです。

 

しかし、人によっては、作り話を平気で言える人がいて、何度も繰り返して言っているうちに、自分でもそれが本当であるかのように思い込んでしまう人もいます。そういうことを繰り返すと、社会生活にも支障毛出るので、虚言癖という精神的な病であるとされています。

 

最近ネットで自分自身の顔を加工して、美人で可愛く見せる女性が増えています。本人は「ちょっと盛ってるだけ」といってますが、もうオリジナルとは全くの別人。しかもインスタグラムやツイッターなどのSNSで、数万人もフォロワーを集めていたりするのを見ると、もはや病気です。嘘で人の賞賛を集めても、それは実体のない幻なのに、それが自分であると思い込んでいるのです。

 

インターネットは匿名の世界なので、自己承認欲求を満たそうとしている人達の行動の歯止めがありません。人間の本能の歪んだ部分が目立っていると思います。

 

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